コンセプチュアル・アーキテクトとは
社会的思想が強かったり、アートよりの作品をつくる建築家のこと。
実際に建てられた建築物だけでなく、ドローイングやインスタレーションなどを通じて、世の中にインパクトを与える存在。
建築という枠は使っているけど、やっていることは革命家とかアジテーターに近い。現代アートにも見られる傾向。
<コンセプチュアル・アートとの関連>
概念の重視や、表現の非物質化を意図する「コンセプチュアル・アート」と近い考え方でもある。表現分野は違うけど、両方ともアイデアやコンセプトを作品の中心に置いている。
「概念芸術」とも訳されるように、作品の概念や観念的側面を重視するため、言語はもっとも重要な媒体になりうるものであり、批評家のL・リパードはこの傾向を「芸術作品の非物質化」とも定義している。従来の芸術ジャンルの物理的属性に依拠しないという意味では、芸術作品の唯一性や一回性、商業化などへの否定的見解を伴うものであり、特に複製可能で容易かつ迅速に流通しうる印刷媒体などの活用によって意図されていたのは、物質と流通の双方から従来の美術(制度)の改革を行なうことだった。そのため、60年代後半から70年代を中心に展開したコンセプチュアル・アートでは、写真、郵便、ファックス、電話などの流通・情報メディアが頻繁に用いられた。出典:artscape
時代の先を行き過ぎる建築 "アンビルド"
思想や造形表現に重点が置かれ過ぎると、結果的にアンビルドになるケースが多い。
理由として、
1. その時代の技術では建築不可能、または実現するには多大なコストがかかる
2. 技術的には建築可能だが、思想や造形が前衛的すぎて、施主を含め世間の啓蒙が必要
3. コンセプトが先行し、建築というジャンルでは取り扱いが難しい
<アンビルドが果たす役割>
上記のような理由で実現できなかったアイディアは、アンビルドとして括られ批評されることがある。なぜ批評するのかというと、既存の建築やそれを取り巻く制度、社会的思想などに揺さぶりをかけるため。
アーキグラムのように、消費されることを目的に、あえてアンビルドにすることもある。
また、アンビルトに限定して賞を与えるコンペティションや、実現した案より落選した案の方が強いインパクトを与える例もある。
時代を変えて別の建築家によってアイディアが実現される例など、アンビルド・アーキテクトの可能性は色々ある。
フレデリック・キースラー
フレデリック・キースラー
1890-1965
オーストリア・ハンガリー帝国チェルノヴィッツ(現ウクライナ・チェルニウツィー)生まれ
芸術家、建築家
マジック・アーキテクトと呼ばれる。短期間アドルフ・ロースのもとで働く。もとはウィーンの舞台美術家。1923年からデ・ステイルのメンバー。
エンドレス・ハウス(案)
1947-60 MoMA
設計:フレデリック・キースラー
死海の書の神殿
1965 イスラエル エルサレム
設計:フレデリック・キースラー
via wikipedia
レイモンド・アブラハム
The House for Music
1999 ドイツ ノイス
設計:レイモンド・アブラハム
ハンス・ホライン
ハンス・ホライン
1934-2014
オーストリアの建築家
建築家ワルター・ピッヒラーと共同で活動した。
<「すべては建築である」>
背景にあるのは、ドラッグと電子テクノロジーの出現。今まで前提とされてきた、建築=物質的な構築(フィジカル)の定義が大きく揺らいだ時代。
このピルは閉所恐怖症の患者のために開発されたもので、一粒の錠剤を服用することで患者の環境が改善される、それ自体が、すでに建築的な行為だということを示している。
背後にある思想はフッサールの現象学で、客観的な世界は存在せず、主体によって意識されたものだけが世界であるという考えが反映されている。
シェリン宝石店(元レッティ蝋燭店)
1966 オーストリア ウィーン
設計:ハンス・ホライン
via hollein.com
トラベル・エージェンシー
1978 オーストリア ウィーン
設計:ハンス・ホライン
via bipolarch
ウォルター・ピヒラー
1936-2012
オーストリアの彫刻家、建築家
1962年よりハンス・ホラインとの協働を始め、グラフィック・デザイナー、デザイナ-、編集者として活躍した。
アーキグラム
アーキグラム
1961-1974 イギリス
ドローイングが建築作品の前衛グループ
ピーター・クック、ロン・ヘロン、デヴィッド・グリーン、デニス・クロプトン、ウォーレン・チョーク、マイケル・ウェブ
彼らは現実に建設される実作を殆ど造らず建築のドローイングそのものを「建築作品」とすることで、建築を完全に情報化し、マス・メディアに消費させようとした。
A walking City, 1964 Ron Herron, Archigram
The Plug-In City, 1964 Peter Cook, Archigram
レベウス・ウッズ
レベウス・ウッズ
1940-2012
アメリカのアンビルドの建築家、芸術家
<「建築は戦争である」>
ケヴィン・ローチ事務所出身で、その後エーロ・サーリネンの事務所で勤務。
「戦争」や「兵器」などを連想させるドローイングを数多く残した。
アーキテクチャと戦争が同一の特定の意味であるという立場を保持し、そのアーキテクチャは、本質的に政治的である。出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/レベウス・ウッズ
レベウス・ウッズは、彼の長いキャリアを通して、社会にある物理的で心理的な構造間の類似点を認めることで、その構造が私たちの存在を変容させるのかどうかを表現した。
関連書籍
『Elastic Architecture: Frederick Kiesler and Design Research in the First Age of Robotic Culture (MIT Press)』,Stephen J. Phillips (著),2017
『HANS HOLLEIN 作品集―a+u Extra Edition(エー・アンド・ユー臨時増刊)1985.2』,ハンス・ホライン (著),株式会社エー・アンド・ユー,1985
『Pamphlet Architecture 15: War and Architecture』,Lebbeus Woods (著),1996
『アーキグラムの実験建築1961-1974』,水戸芸術館 (著), 山形浩生 (著),ピエ・ブックス,2005
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