メンフィスとは
ポストモダンを代表する多国籍のデザイナー集団。
1981-1988にかけて、主にイタリアで活動した。
1976年にソットサス、メンディーニらは、前衛デザイナーグループ「スタジオ・アルキミア」を結成し、それがのちにメンフィスとなった。
<メンフィスのメンバー>
エットレ・ソットサス、アレッサンドロ・メンディーニ、アンドレア・ブランツィ、ミケーレ・デ・ルッキ、ナタリー・ドゥ・パスキエ、バーバラ・ラディーチェ、磯崎新、倉俣史朗 他(梅田正徳「タワラヤ」)
<「作りたいデザインを作る」ラディカル・デザイン運動>
メンフィスは、当時の主流であった機能性や合理性を重視したスタイルとは真逆のデザインをおこなった。
カラフルで複雑な造形表現で、見た目にインパクトのあるものが多かった。
クライアントからの制約なしに、つくりたいものをつくるといったスタンスだったため、商業的には成功とはいえなかったが、建築インテリア業界のみならず、ファッション業界にも多大な影響を与え、現代でもコンセプトとしてよく引用される。
<メンフィスのネーミング>
メンフィスの名は、古代エジプトの都市名と、メンバーがたまたま聴いていたボブ・ディランの曲名からとられた。
「Stuck Inside of Mobile with the Memphis Blues Again」Originally recorded 1966 released
<時代背景:アメリカ「ビート・ジェネレーション」>
この時代のアメリカを象徴する思想運動「ビート・ジェネレーション」のメンバーと、エットレ・ソットサスは交流があり、既存の価値観に対する反発という意味で、2つの活動には共通した考え方があった。
ビートニクの活動(1955-1964)は、ロックやヒッピー文化、ニューレフトといったカウンターカルチャーの思想のタネとなり、アメリカ初の思想運動だったこともあって、現代のサードウェーブ世代やミニマリスト(1960-)の考え方にまで広く、長期間にわたって影響を及ぼしている。
エットレ・ソットサスによって撮影されたビートニクのメンバー写真
<主な名著>
ジャック・ケルアック「オン・ザ・ロード」
アレン・ギンズバーグ「吠える」
ウィリアム・バロウズ「裸のランチ」
彼らが生きていた1950年代のアメリカは、戦後の急速な経済発展によって豊かな生活がもたらされた一方で、ベトナム戦争(1955-1975)や人種差別など、世の中に対する不満が募っていた時代。
そんな時代の鏡としてうまれたのがビートニクで、彼らは既存の価値観や体制に対する反発を掲げていた。
世の中のシステムが変わるほどの大きな経済成長が起こると、過去を懐かしむように原始へかえろうとする考え方が出てくることが多い。ヨーロッパでそうであったように、アメリカでも同じように、反発を抱えながら上昇していくことで新しい文化がうまれていった。
<ポップアートの流行>
イギリスから始まったポップアートが隆盛したのもこの頃。メンフィスのデザインにも影響を与えている。
ポップアートのはじまり「インディペンデント・グループ」についてはこちら→
中心人物
<エットレ・ソットサス>
ソットサスはオリベッティ社のタイプライター「ヴァレンタイン」をはじめとする工業デザインの分野で名を知られるようになった。彼は63歳で「メンフィス」を立ち上げており、かなり年の離れた20代の若者たちと活動を共にした。
エットレ・ソットサス
1917-2007(90歳没)
オーストリア生まれ、イタリアの建築家、インダストリアルデザイナー
via doppiozero
<アレッサンドロ・メンディーニ>
数多くのブランドイメージ・コンサルタントとしての顔を持つ。(フィリップス、スワロフスキー、スウォッチ、ビザッツァなど)現在はアレッシィ社のイメージ・ディレクター的な存在。
アレッサンドロ・メンディーニ
1931-(85歳)
ミラノ生まれの建築家、デザイナー
via diariodesign
バロック調の肘掛け椅子に、画家ポール・シニャックの点描画を組み合わせた。
メンフィスの作品
フローニンゲン美術館
1994 オランダ フローニンゲン
設計:アレッサンドロ・メンディーニ 他
関連書籍
『Memphis: Objects, Furniture and Patterns』,Richard Horn (著),1986
『KURAMATA SHIRO and ETTORE SOTTSASS 倉俣史朗とエットレ・ソットサス』,倉俣史朗 (著), エットレ・ソットサス (著), 21_21 DESIGN SIGHT (編集), & 2 その他,ADP,2010
『夜ノ書―エットレ・ソットサス自伝』,エットレ ソットサス (著), Ettore Sottsass (原著), 東 暑子 (翻訳),鹿島出版会,2012
『裸のランチ (河出文庫)』,ウィリアム・バロウズ (著), 鮎川 信夫 (翻訳),河出書房,2003
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